■懐石料理を食べに行った

彼的には一ヶ月記念だかなんだとか。


木屋町の看板を出していない店で
そこの廊下はおもしろかった。

暗くて人がすれ違えないほど細い廊下のおくに
ぽつりと光に照らされて浮かびあがる一輪の花

その一輪の花の美を表現するためだけにあるような細い廊下
なかなか奥が明らかにならないワクワク感もいい

そんな素敵な空間を京都の長屋は持っている



■味の記憶

食事が始まると
どこかで経験のある味だなあ、と思っていた。
バターと柿の風味がふわりと舌に広がった前菜で思い出した。

以前父が京都に来て連れて行ってくれた山の上のホテルで食べた料理の前菜と似てたのだ。
あの時私は不思議な味のするそれをとても気に入って絶賛していた。

そしたら正面の父は無言で自分のそれを箸でぽいっと私の皿にほおりいれたのだった。




■犠牲者

それにしてもその日はあの日と違って、正面に座る男はよくしゃべる。
呼び方を苗字じゃなく名前で読んで欲しい、だとか次のデートのことだとか
あたしの部屋に行きたいだとか、

私の手をずっと握ったまま喋り捲るから
料理の説明に来てくれた子が戸惑ってるよ。

口説きに必死なときはおじさんも、若い子とかわらない。

それにしてもあの夜の料理は
私たちの会話の犠牲者だ、と思った。

出来れば舌を余計なおしゃべりではなく
味わうことに集中させて
一品一品を最大限に楽しみたかった。



■領収書は笑顔で受け取れ

食べ終わって閉店までいて席で会計をすませると
彼はぽいっと領収書を私に寄こした。


私はしゃべってる途中だったのでチラッと見てなんとなく裏返したら

領収書を受け取れんとはまだまだだな、

といわれて

なにそれ、、、、

と思った。
今思うと、彼は感謝してもらいたかったんだろうと思う。


領収書を自分のバッグにしまってにっこり笑って

ありがとう、おいしかった(はあと

とでもいうのが正解だったんだろう。


でも払ってもらった金額を見せられるなんて
その恩着せがましさが苦手だ。

あたしも普通のおじさんを相手するにはまだまだ修行が必要。








コメント

おまつり
2008年9月21日4:38

全く楽しそうじゃないのがステキ♪

昔勤めていた先でおごられた時の話

『いくらでした』

「あ?知んね。五百円くらいじゃね?」

そんな大人になりたいと思った10代の頃でした。
大人になった今
真似しようにも口元が引きつって中々真似出来ませんが(笑)

るん
2008年9月22日14:39

>「あ?知んね。五百円くらいじゃね?」

いいですねーーー、スマートだ。
いつもの長々としたウソっぽいやりとりを
短縮してさらにウイットに富んだものにしてしまいますねえ。

あの払う気もないのに
「いやでも悪いですから出しますよ~」
みたいなの苦手なんですよね、私。

でも
「500円くらいじゃね?」
とか言われた日にゃー、
「安っ!!ったくどんな魔法を使ったんですかー!!
 でもご馳走様でした!!」
と気持ちよく返せる。

その言葉、頂きです!!

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